英語の時間的感覚1 |
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3.2. 過去形と現在完了形(この章のまとめ) ここで、過去形と現在完了形について比較をして、それぞれの理解を深めることにする。両形式とも表す出来事は過去に生じたことであるが、どちらを選択するかは発話の際に話し手が抱く心境で左右される。 「3.1.1. 完了・結果」では、すでに過去形と現在完了形の相違についてふれていたが、それは次の例の比較であった。 (19) a. The clock struck ten. (時計が10時を打った。) b. The clock has just struck ten. (時計がちょうど10時を打った。) (19a)は過去形、(19b)は現在完了形だが、これらを図にすると次のようであった。 (20) a. 過去形 b. 現在完了形 (20a)は過去形、(20b)は現在完了形を表す図だが、ここで過去形とは生じた出来事について、単なる過去のこととして捉えている。しかし、現在完了形では話し手が「今」を感じるように、心境が現在と関係づけられていることがわかる。 次の例も見てみることにする。 (21) a. We lived in Hakodate for five years. (私たちは函館に5年間住んでいました。) b. We have lived in Hakodate for five years. (私たちは函館に5年間住んでいます。) (21a)は過去形、(21b)は現在完了形であるが、(21a)はある過去の5年間函館に住んでいたことを表している。このとき話し手はその出来事を過去のこととして捉えているために、現在においては函館に住んでいないことを意味として含むことになる。それに対して(21b)では現在まで続く5年間函館に住んでいることを表しているために、過去形の意味にみられるような現在との関係においての切り離しは生じていない。このことをそれぞれ図にすると次のようになる。 (22) a. We lived in Hakodate for five years. b. We have lived in Hakodate for five years. 2つの図で赤い軸は出来事の継続を表しているが、この場合は函館に住んでいる期間を表すことになる。 つまり、赤い軸は「5年間」を表すが、(22a)の過去形ではそれが現在まで伸びていない。このことは現在に至る前のどこかの過去において、函館から移ったことを意味している。 それに対して、(22b)は現在完了形の図だが、「5年間」を表す赤い軸は現在まで伸びている。このことはある過去から住み始めて、現在まで至っていることを意味している。 以上が過去形と現在完了形の相違だが、結局は発話の際に話し手が持つ心境から形式の選択が生じていることがわかる。 話し手が心境に「過去」を感じると過去形、「現在」を感じると現在完了形が用いられることになる。 では、最後にもう1つ例を出すことにする。 (23) a. Did you ever meet john? b. Have you ever met John? 上の2例はどちらも「ジョンに会ったかどうか」を聞く例だが、(23a)は過去形、(23b)は現在完了形である。 上はどちらも文法的に誤りということではなく、話し手は発話の際に好みの形式を用いて良いことになるが、あなたはどちらを選択するだろう。 この場合もこれまで述べてきたように、話し手の心境で選択が決定される。 つまり、話し手が発話の際にある特定の過去を思い描くならば(23a)を選択することになるが、そうでなければ(23b)を選択することになる。 |
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