英語の時間的感覚2 |
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2.2.2.2. 過去においての状態 これは先の用法における動作とは異なり、状態を過去のこととして表す用法である。 (8) a. She resembled her sister. (彼女は姉と似ていた。) b. Mary looked happy. (メアリーは、うれしそうな顔をしていた。) 上の2例は過去のある状態を表しているが、いずれも過去を示す副詞が文脈上に現れていない。しかし、このことは時間表示上で心の位置(M)が過去時に置かれないことを意味することではない。前節でも述べているが過去時制を用いるということは、発話の際に話し手の念頭に特定の過去が置かれていることが明らかだからである。したがって、その副詞に相当する時点は言外に含まれている。 また、「状態」を表すことからこの用法については、次のようにも時間表示ができる。 (9) 上では出来事時(E)を中心として新たな時間的枠が設けられているが、これは「状態」がある程度の時間的幅を持っているからである。(この時間表示は過去進行形に類似するが、詳細は第6章 の進行形で述べる。) ところで、心の位置(M)が過去時に置かれることは、話し手の心境と出来事との関係を切り離すことを意味する。 (8a)のShe resembled her sister. では、彼女が姉と似ていたということを表しているが、当然このことは過去のことである。話し手は現在とは関係のない単なる過去のこととして捉えている。現在において彼女が姉と似ているかは不明である。 また(8b)のMary looked happy. も同様に、メアリーがうれしそうな顔をしていたのは、単なる過去のことであり、現在においてのメアリーの表情は不明である。 次は知覚動詞をcouldと共に用いた例である。 (10) a. If you can tell me the initials of my name, you can have what's in this bag. Momentarily staggered, she rose to the challenge, and I could feel her mind racing feverishly. (「もしも私の名前の頭文字を言うことができるのなら、このバックに入っているものを渡そう。」少しの間ためらってから、彼女は質問に挑んだ。そして私は思いをめぐらしている彼女の心境を感じていた。) (BNC) b. He could hear strange music coming from behind dark trees and could hear people screaming and laughing, and shouting out his name. (暗い森の背後から奇妙な調べが流れてくるのが聞こえてきた。それから、悲鳴を上げ、笑い、彼の名前を叫んでいる人々の声が聞こえてきた。) (BNC) 上の2例ではfeelとhearの知覚動詞を用いているが、couldと共に用いているのは、状態性を表すためである。なぜなら、feelやhearなどの知覚動詞は、現在時制では「状態」を表すが、過去時制では「動作」を表すからである。それは、過去時制が出来事を過去のこととして捉えるために、完結した意味を持たせるからである。そして、couldを用いることで状態性を表すことができるのは、couldが持つ「能力」の意味のためである。 以上から次のような違いが生じてくる。 (11) a. I heard a door slam. (ドアがバタンと閉まる音を聞いた。) b. I could hear a door slamming. (ドアがバタンバタンと閉まる音が聞こえていた。) 2例にはいずれもhearが用いられているが、(11b)にはcouldも用いられている。 (11a)は過去時制の特徴から「1回の動作」が意味として含まれることになる。しかし、(11b)では状態性を表すために、「連続性」の意味が含まれることになる。 そこで、(11b)を次のように書き換えた場合は不自然になる。 (12) a.*I could hear a door slam. b.*I was hearing a door slamming. (12a)はslammingの代わりにslamを続けているが、この場合状態性を表すcould hearと、1度の動作を表すslamの意味が相反するので不自然さを与えることになる。 また、(12b)はcould hearの意味から進行形に書き換えているが、当然知覚動詞は通常進行形にすることはできないので、これも不自然な例となる。couldは進行形にすることができない知覚動詞の、代わりの意味を表していることになる。 |
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