英語の時間的感覚2 |
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3.3.2. 過去完了形の主な2つの用法 過去完了形には先にも述べたように現在完了形を過去のこととして捉えた用法と、過去の過去を表す用法の2つが主な用法としてある。まずは、現在完了形を過去のこととして捉えた用法には、次のような例がある。 (38) a. She had already finished dinner before I came back home. (彼女は私が家に戻る前に、すでに夕食を済ませてしまっていた。) b. Mary had seen the branch chief already before I introduced her. (メアリーは私が彼女を紹介する前にすでに支店長に会ってしまっていた。) c. John had been to Japan many times when he visited Kyoto. (ジョンが京都を訪ねたときは、日本にはもう何度も行っていた。) d. He hadn't visited his mother when she passed away. (彼は母親が亡くなったときに長い間彼女を訪ねていなかった。) (38a)と(38b)は完了・結果、(38c)は経験、(38d)は継続の用法に相当する。心の位置(M)と出来事時(E)との関係は、(38a)では副詞節であるbefore I came back homeが心の位置(M)に相当する。(*18) 話し手はこの時点までの間に、「夕食を済ませた」ことを表している。これが出来事時(E)に相当することになる。 (38c)の心の位置(M)はwhen節である。そしてこのwhen節が表す時点までの間に、出来事時(E)に相当する「何度も日本に行った」ことが生じている。
次は過去の過去を表す用法の例である。 (39) a. At eleven she had been so hungry. (11時にはもう彼女は腹ぺこだった。) b. There had been a serious accident before I came here. (私がここに来る前にひどい事故があった。) (39a)の心の位置(M)は、副詞句のAt elevenである。そして出来事時(E)は「腹ぺこだった」であるが、このことも心の位置(M)が表す時点までの間に生じたことを表している。しかしこの場合は、心の位置(M)と出来事時(E)との間に時間的なつながりがなく、単に時間的に前後の関係を表している。そこでこの過去完了形については、過去時制の一段古い時間を示すための、単なる形式と考えることもできる。 これは(39b)も同様で、心の位置(M)はbefore節だが、このbeforeが意味上「前に」を表すように、それよりもさらに以前の時間帯になる主節では、過去完了形が用いられている。 しかし、現在完了形の過去を表す用法と、過去の過去を表す用法とでは意味上の区別が難しい場合が多い。そこで、通常は2つの用法をまとめて扱うことも多いのである。 ここでは過去完了形と時間表示の関係も述べることから、2つの用法を区別していくが、次にこれらの用法について、それぞれを現在完了形と過去時制の時間表示と比較することにする。まずは、現在完了形の過去を表す用法の場合である。 (40) a. 現在完了形 b. 過去完了形 現在完了形の時間表示上において、心の位置(M)と出来事時(E)の関係は、E-Mである。この「-」(ハイフン)は、双方が時間的に離れていることを表している。この関係は、たとえ過去のこととして捉えられた場合においても変わることがない。そこで、過去のこととして示される場合に、そのままの関係を維持しながら過去へ移動することになる。こうして示されるのが、(40b)の過去完了形の時間表示なのである。 (41) a. 過去時制 b. 過去完了形 (41a)は過去時制の時間表示である。心の位置(M)は、出来事時(E)と同じ過去時に置かれている。ここで心の位置(M)を基準として、出来事時(E)がさらに以前の過去時に移動した結果が、過去完了形の時間表示なのである。 |
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