|
現在完了形には、特定の過去時を示す副詞表現が共起しないことは一般的に知られている。それは、特定の時点を示す副詞は、話し手の焦点をその時点に置くことを意味するからである。話し手の焦点が現在から離れる場合は、現在との心境的切り離しが現れるが、これは現在完了形の性質とは異なる。したがって、特定の過去時を示す副詞が共起する場合は、過去時制のほうを用いることになる。
(1)
a. *I have seen her yesterday.
b. I saw her yesterday.
(私は昨日彼女に会いました。)
(1a)のように、現在完了形は特定の過去時を示す副詞と共起することができない。この場合、自然な文にするには、(1b)のように過去時制を用いることになる。
また次のように、特定時を示すwhenとも共起することができない。
(2)
a. *I have been to Hokkaido when I was a child.
b. I went to Hokkaido when I was a child.
(2a)が不自然になるのは、when I was a childがあるためである。このようにwhen+過去時制によって特定の過去時を示すような場合は、yesterdayと同様に話し手の焦点が過去に置かれることを意味する。
また、whenについては、疑問詞として現在完了形と一緒に用いることができない。なぜなら、特定の時点をたずねることになるからで、その意味の上から、現在完了形とは共に用いることができないことになる。
(3)
a. *When have you arrived here?
b. When did you arrive here?
(あなたはいつここに到着したのですか。)
(3a)は不自然になるが、(3b)のように過去時制を用いると自然になる。以上のことは話し手が置く焦点位置と形式の性質から言えることである。
ただし、必ずしも疑問詞のwhenと現在完了形が共起しないというわけではない。たとえば、次のような例では用いることができる。
(4)
a. When have I been harsh, tell me?
(いつ私が無情なまねをしたことがありますか、ええ?)
b. When have you ever encouraged a living artist?
(現在の芸術家を後援したことが、いつありますか。)
(安藤:2005, p.146)
c. When have I told you a lie?
(いつあなたにうそをつきましたか。)
上の場合、それぞれは「いつしたことがありますか」という意味を持っている。いわゆる修辞疑問ということになる。したがって(4a)は、「今まで無情なまねをしたことがない。」という意味を持ち、(4b)も「今まで後援したことがない。」ことを意味として持つ。そして当然(4c)も、「今までの間に、あなたにうそをついたことはない。」という意味を持っていることになる。
いずれも疑問詞whenを用いながらも、意味的には話し手の焦点が現在にあることになる。このようなwhenの用い方は、修辞疑問に限ったことではないが、大半はその意味で用いられている。
参照
1. 現在完了形について(英語の時間的感覚3.1.1)
2. 過去時制について(英語の時間的感覚2章)
3. 過去時制と現在完了形の比較(英語の時間的感覚3.2)
引用文献
安藤貞雄(2005)『現在英文法講義』開拓社
|