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ここでは倒置の種類と、それが生じる理由について説明する。
倒置(inversion)とは、語順が変わることを言う。英語の語順は「主語+(助)動詞」が通常だが、これが「(助)動詞+主語」になる。このことは、通常の語順を変えることになるので、そこには話し手の驚きなどの感情が含まれることになる。文法書等で「倒置が用いられるのは、語句を強調するため」と説明されることがあるが、それはそのためである。
たとえば、当たり前のように用いている疑問文は、実は倒置が生じている。Are you? やDoes she? などは、主語と動詞が倒置した結果である。この場合も話し手の何らかの感情、たとえば聞きたいという思いなどが含まれることになる。疑問文に見られる倒置は、平叙文との相違を明確にするためと言える。
しかしながら、疑問文に見られる倒置は、文法上必然的に生じるものである。このように義務的な倒置には、他にもifの省略による倒置などがある。
また義務的ではないが、比較構文や直話法の伝達部にも生じることがある。
(1)
"Do you know him?" said John.
(「彼を知っていますか」とジョンは言った。)
上は伝達部において倒置が生じている。伝達部が文頭に置かれるときは、倒置が生じないが、引用部の後に置かれるときは生じることがある。
ただしこのような倒置が生じるのは、人称代名詞以外の名詞の場合である。人称代名詞のときは倒置が生じない。
(2)
"Yes," she answered.
(「はい」と彼女は答えた。)
また、強調のために副詞語句が文頭に置かれる場合の倒置も、義務的に倒置をしなければならないということではない。ただ多いというだけである。
(3)
a. Here comes the teacher.
(ほら先生が来たぞ。)
b. There goes the train.
(ほら列車が行くぞ。)
c. Down came the rain.
(雨が降ってきた。)
このように倒置が生じる副詞語句には、場所や方向を表すものが多い。また、人称代名詞が用いられるときは、倒置は生じない。
しかし否定語句が文頭に置かれると、倒置は義務的である。この場合、たとえ人称代名詞が用いられたとしても、倒置は生じる。
(4)
a. Little did I dream that I would marry her.
(彼女と結婚しようなどと夢にも思わなかった。)
b. Never have I seen such a terrible disaster.
(私はそのようなひどい災害を一度も見たことがありません。)
上のように、否定語句強調のための倒置は、(3)とは異なり文語調である。
参照
倒置について(英文法の発展的学習 8)
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