3.1. 意志(主観性-客観的意味)
willの意志とは主語の意志を表すことであるが、普通は主語が一人称のときにその意味が現れやすい。willが「意志」を表すのか、それとも「予測」を表すのかについては文脈による。(*12)
*12 |
進行形や完了形が続く場合は、意志的要素が弱められる。
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(2)
a. I'll lend you some money, if you like.
(よろしければお金を貸しましょう。)
b. I'll send you the results of my studies tomorrow.
(明日研究の結果を送ります。)
意志の意味は文脈により強くも弱くもなるが、そこから「約束」や「おどし」の意味も派生する。
(3)
a. I won't borrow money.
(もうお金は借りません。)(約束)
b. I'll break your neck!
(首の骨をへし折るぞ!)(おどし)
意志の意味は多様な意味を派生しやすい。それは話し手によりその意志性が左右されるからである。否定文ではその意志性から、「拒絶」の意味も現れることになる。
(4)
a. I won't give up.
(降参はしない。)
b. She won't do her homework.
(彼女は宿題をしようとしない。)
二人称主語を疑問文で用いると、willの意志性から相手の意志を聞くことになり、そこから「依頼」や「勧誘」の意味も表すことになる。
(5)
a. Will you open the window, please?
(窓を開けてもらえませんか。)(依頼)
b. Will you have some coffee?
(コーヒーはいかがですか。)(勧誘)
二人称主語を用いて、話し手の意志性が強く現れると、それは相手に対する「命令」の意味になる。このときwillには、当然強勢が置かれることになる。
(6)
a. You will do it at once.
(すぐにそれをしなさい。)
b. You will not be leaving here.
(ここを離れてはいけません。)
willに強勢を置くということは、話し手の意志を強調することになる。そして上のように「命令」を表すようになるのだが、それ以外に「固執」も表すようにもなる。「どうしても何かをする」という固執の意味も、意志性から派生して不思議はないことになる。
(7)
a. You will arrive late for the meeting.
(どうしても会議に遅れてくるね。)
b. Boys will be boys.
(男の子はやっぱり男の子だ。【わんぱくなのは仕方がない。】)
また、意志の意味が広げられて反復的な意味を表すようになると、そこから習慣や習性の意味も現れることになる。
(8)
a. She will sit there and look at the sea for hours.
(彼女はそこに座り、何時間も海を眺めていることがある。)(習慣)
b. He will go for a walk after lunch.
(彼は昼食の後に散歩をすることがある。)(習慣)
c. Oil will float on water.
(油は水に浮きます。)(習性)(*13)
*13 |
(8c)は、Oil floats on water. でも良いがwillを加えることで、「油を垂らすと水に浮く」というように単なる事実ではなく、話し手の予測性も含まれることになる。その「習性」に視点を置いているとも言えるが、そのような予測性の関与が考えられない現象にはwillを用いることができない。
a. *The sun will set in the west.
b. The sun sets in the west.
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willの習慣について、習慣は法助動詞を用いない現在時制で表すことができるが、それにも関わらずwillを用いるのは、そこに話し手が思う「特徴的な習慣」を含むからである。このことは、単なる習慣的動作ではなく、その動作の特性に着目していることになる。
以上がwillの意志である。(be going toもwillと同様に意志の意味を表すが、その意志はすでに計画された意志である。be going toについてはThe sense of time in EnglishⅡでふれています。)
ところで、過去時制のwouldだが、「意志」から派生する「固執」や「拒絶」の意味では普通に用いられる。
(10)
a. I kept him back but he would go there.
(私は彼を引き止めたが彼はそこに行くときかなかった。)(固執)
b. The door wouldn't open.
(ドアはどうしても開かなかった。)(拒絶)
また、wouldは過去の習慣や習性を表す意味ではよく用いられる。
(11)
a. We would often go swimming in the pool when we were children.
(私たちは子供の頃よくプールへ泳ぎに行ったものでした。)
b. She would sit on a park bench for hours when she was single.
(彼女は独身の頃、公園のベンチに何時間も座っていることがあった。)
同じ過去の習慣でも、状態動詞を用いる場合や、現在と対比する意味ではused toを用いることになる。wouldには状態動詞を用いることができない。
現在との対比とは、過去に生じさせていた習慣を現在においてはもはや生じさせていないことを意味するが、wouldはその意味を表すことが曖昧であり、used toは明確にその意味を持つ。(*14)
*14 |
現在との対比に重点を置かないwouldは、過去の出来事をなつかしむときに多く用いられる。このとき感情的意味を含むことにもなるが、そこで(11)の例にあるように「~をしたものだった」という日本語訳も適するようになる。
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(12)
a. There used to be a post office here.
(ここにはかつて郵便局がありました。)
b. He used to love her.
(彼はかつて彼女を愛していました。)
(12a)は、もうそこには郵便局が存在していないことが意味として含まれている。また、(12b)にも彼女のことを愛していた彼は、今ではそのような気持ちがないことが含まれている。
また、used toは現在との対比が明確なために、普通は過去の時点を示す副詞は続けない。もともとそのような副詞がused toには組み込まれているからである。
(wouldとused toについてはThe sense of time in EnglishⅡでもふれています。)
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