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T-2.there構文について
c. 存在のthere構文の定名詞句について
 

 存在のthere構文には、意味上の真主語として定名詞句が用いられないとされている。(「there構文の不定を表す主語について」を参照。)しかし直示のthere構文では、定名詞句も用いられる。(「there構文の2用法」を参照。)
 しかしながら、定名詞句は存在のthere構文でも用いられることがある。ここではそのことについて説明をする。

 まず、次の例がある。

(1)
a. There is the problem of race in America.
(アメリカには人種という問題がある。)

b. In England there was never the problem that was in America.
(英国では、アメリカで存在した問題は決して存在しなかった。)

 上のthere構文は直示のthere構文ではなく、存在のthere構文である。それにも関わらず定名詞句が用いられているのは、ofまたはthat節によって限定されている後方照応的な定名詞句だからである。この場合、その限定性から必然的に定名詞句になっているとも言える。しかし、次はそのように後方照応になっていない例である。

(2)
There's the moon and stars in the sky.
(空に月と星がある。)

 上の例の定名詞句は前方照応的だが、用いることができる。このときの存在のthere構文は、列挙を表しているからである。次も同様である。

(3)
A: What's worth visiting here?
(ここではどこが見所でしょうか。)
B: There's the park, a very nice restaurant, and the library.
(公園があるし、とても良いレストラン、それに図書館があります。)

 これらの例はリスト文(list sentence)とも言われる。その特徴は、リストとされる項目は既知のものであったとしても、リストとして選択されることについては、そうではないことである。
 つまり、何がどのくらい選択されるかという点で、聞き手Aにとって新情報となっているのである。


 次の例も、聞き手にとっては新情報となっている。

(4)
A: Was there anybody at home yesterday afternoon?
(昨日の午後誰が家にいましたか。)
B: Yes, there was Jane.
(はい、ジェーンがいました。)

 Janeは既知の人物であるが、質問にたいする答えとしては、聞き手Aにとって未知のことである。つまり、新情報を担っていることになる。


 以上のことから、存在のthere構文に用いられる意味上の主語には、定名詞句かどうかということではなく、聞き手にとって新情報かどうかということになる。



参照
there構文とhave(基礎から英語学習Day44)
there構文の不定を表す主語について
there構文の2用法(不定と定名詞句主語)
旧情報と新情報について




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