5.2.4. 一時性Ⅱ(状態)
「進行形は動作動詞にしか用いることができない。」ということは一般的であるが、日本語話者にとっては少々理解が難しいことでもある。たとえば次の例を見てみる。
(14)
a. He is saying bad things about others.
(彼は他人の悪口を言っている。)
b. I only know him by sight.
(私は彼の顔だけは知っている。)
(14a)は前節でも扱った動作継続を表す例だが、その日本語訳に注目してみると「悪口を言っている」というように、いわゆる「テイル形」(過去のことはテイタ形)が用いられている。日本語ではこのように現在の動作継続を表す場合はテイル形を用いるのだが、(14b)の日本語訳でも同様にテイル形が用いられている。
しかし、(14b)で用いられているのはknowであり、これは状態動詞である。つまり、日本語のテイル形は確かに動作継続を表すのだが、同様に状態の継続も表す形式なのである。
そこで、日本語話者はテイル形を双方に用いることと同様にknowをknowingにして用いる誤りを犯すことも少なくないのだが、英語では状態動詞は進行形にしないのが普通である。
以上は動作と状態の双方の動詞に同形式を用いる日本語と、通常はそうはならない英語との相違なのだが、動詞によっては、たとえ状態動詞であっても進行形にすることがある。
(15) I live in Hakodate.
(私は函館に住んでいる。)
上は現在形による例だが、動詞liveは状態動詞であり、通常は進行形にしない。
しかし、ここで進行形にした場合は次のようになるが、不自然ではない。
(16) I am living in Hakodate.
(私は函館に住んでいる。)
上では日本語訳に変わりはないが、含まれる意味には相違がある。それは前節ですでに述べているが、進行形は一時性の意味を持っていることを思い出してほしい。つまり(15)のように現在形では未来まで継続することが期待される状態であっても、進行形にした場合は一時的な状態となる。そこで(16)では函館に住んでいることが一時的であり、近いうちに他へ移ることが意味として含まれることになる。
もう1つ例を見てみることにする。
(17) You're just hearing things.
(それは空耳だよ。)
上も状態動詞であるhearを用いているが、一時的な意味を表すために進行形が用いられている。
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