たとえば、会話中において一方がI live in Hakodate.と発話したとする。その意味はこの話し手が現在において函館に住んでいるという状態を表している。このとき話し手は、自身が函館に住んでいることを「現在の事実」として捉えて発話していることになる。心の位置(M)は現在時から離れないために、その現在との関係が保たれたままである。
しかし、もう一方がI lived in Hakodate.と発話したとする。これは過去時制の例であるが、意味はある特定の過去においてもう一方の話し手が函館に住んでいたということを表している。この場合特定の過去を示す副詞はこの例には続いてはいないため、この単文のままでは不自然とされることもあるのだが、会話中における前後の文脈関係から言外に過去を示す副詞が含まれている。
この例は、函館に住んでいたという事実は過去のことなので、心の位置(M)は過去時に移動する。心の位置(M)は現在時から離れることになるので、現在との関係を切り離してしまう。事実I lived in Hakodate.とは、現在において函館には住んでいないという意味が含まれることが普通とされる。