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英語の時間的感覚Ⅱ

経験の用法-英語の時間的感覚Ⅱ

 

3.1.2.3. 経験の用法

 これは、現在までの間に何らかの出来事が生じたことの有無、または頻度を表す用法である。
 現在と結びつけるために、「~をしたことがある」というように日本語では訳されやすい。話し手の経験を表すことになり、そこから経験の用法といわれる。(*13)

*13  この用法は「存在の用法」とも言われている。「経験」とは人がすることであるために、主語が人以外の「物」であった場合は、この「経験の用法」が名目上適さないことになるからである。

 (22)
  a. I've been to France once.
   (私は一度フランスに行ったことがあります。)
  b. I've never seen Lac Leman. Have you ever seen it?
   (私はレマン湖を見たことがありません。あなたは見たことがありますか。)

 上の2例は経験の用法であるが、出来事の有無、または何度生じたかについて表すことになるので、ever、never、often、sometimes、onceなどの副詞が続きやすい。

 しかし、経験の用法とは現在完了形の3用法の中では、特に生じた出来事が現在から時間的に離れていると考えられる用法である。
 たとえば(22a)は一度フランスに行ったことがあるという例であるが、話し手がフランスに行った時点はこの単文からはわからない。だが、普通は相当な時間が経過していると考えられる。ここで、話し手と聞き手のお互いが日本に在住している間柄ならば、それはなおさらの事である。

(23)
英語の現在完了形の経験の時間表示 英語の現在完了形の経験の時間表示

 上は先に示した現在完了形の時間表示であるが、出来事時(E)については完了・結果の用法や継続の用法とは異なり、現在との間には相当な時間的幅が存在していると考えられる。しかし、この用法ではいくらその出来事が時間的に離れていても、生じた時点には話し手の焦点が向かっていない。話し手は、現在からその出来事を見渡すような感覚でいることになる。

 たとえば、(22b)ではレマン湖を見たことがないことを表しているが、このことは現在までの間に、話し手がそのような経験をしていないということである。また、その後に続けている疑問文についても「いつ見たのか。」ではなく、「見たことがあるのか。」というように、現在までの間に見たことがあるのかどうかを、現在から見渡す感覚で聞いていることになる。


英語の時間的感覚


 このような経験の用法について、日本語で相当する表現には「これまでに」や「今までに」がある。これらには、漠然とした過去からの時間帯を考えていながらも、現在を基準として話し手の焦点がそこに残っていることを表しているからである。

 (24)
  a. 今までに北海道へ行ったことがありますか。
  b. 私はこれまでにその試験を5回受けました。

 上の2例は、いずれも現在を中心として考えられている。
 (24a)は現在までの経験の有無を聞いているが、(24b)ではそれまでの間に生じた出来事の回数を表している。この2例を英語に書き換えた場合は次のようになる。

 (25)
  a. Have you ever been to Hokkaido?
  b. I have taken the examination five times.

 (25b)は回数を表すfive timesがなければ、I have taken the examination. で「私はその試験を受けた。」となり、完了・結果の用法として捉えられるが、five timesがあることで一度の出来事に限定されず、現在までの間に生じた回数として捉えられることになる。そしてこの(25b)について時間表示に示した場合は、次のようにすることができる。

(26)
英語の現在完了形の経験用法について 英語の現在完了形の経験用法について

 過去に置かれている5つの出来事時(E)は、話し手が受験した時点を回数分表している。話し手は、その中の1つにのみ焦点を置いているわけではない。このとき現在から全ての出来事を見渡し、5回受験したことをひとまとめにした経験として、心境に捉えていることになる。


英語の時間的感覚











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