3.4. この章と前章のまとめ
過去の時間帯の形式として、前章では過去時制、この章では現在完了形について述べ、さらに過去完了形の用法についても述べてきた。
過去時制の特徴は現在との関係の切り離しである。それは話し手が発話する際にある特定の過去を念頭に置き、焦点がその時点に置かれることを意味する。そして、その結果話し手は現在とは関係のない出来事として単に捉えて、過去時制を用いることになる。この過去時制の時間表示は次のようであった。
(50)
心の位置(M)は過去時に置かれているが、このことは話し手の焦点が過去にあることを意味するばかりではなく、現在から心の位置(M)が離れることにより、現在との関係が途切れていることをも意味している。
(51)
上は現在完了形の時間表示である。前の過去時制の時間表示と異なり、心の位置(M)は現在時に置かれている。過去時制と現在完了形の時間表示上の違いは、心の位置(M)だけであるが、実際は意味上において大きな差を生じさせている。現在完了形の時間表示において心の位置(M)が現在時にあるということは、話し手の焦点が現在に置かれているということであり、現在との関係を保ったままであるということになる。
以上のことから英語においては、明らかに過去に生じた出来事であっても、そのことを表すために2つの形式が存在している。そしてどちらの形式を選択するかは、その時の話し手の心境による。何らかの出来事を話し手が発話しようとするときに、ある特定の過去を念頭に置いている場合は過去時制を用いることになり、そうでない場合は現在完了形を用いることになる。
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