6.2.2. 動作動詞の継続
動作動詞の継続とは、何らかの動作を持続させていることを表す用法である。これは発話の時点において、動作がすでに生じている最中であることを意味している。
(4)
a. I am taking classes in English.
(私は英語を取っています。)
b. I'm baking some bread.
(私はパンを焼いています。)
上は現在進行形の例であるが、(4a)では英語を取っているという継続時間を表し、(4b)ではパンを焼いているという継続時間を表している。いずれも話し手が発話の際において、すでに進行されている動作である。この現在進行形の時間表示は次のようであった。
(5)
出来事時(E)を中心として、時間的枠が示されている。
次は過去進行形の例である。
(6)
a. He was reading when I entered.
(私が入った時、彼は本を読んでいた。)
b. Her children were playing in the garden when she called them.
(彼女が子供たちを呼んだ時、子供たちは庭で遊んでいた。)
異なるのは、話し手が焦点を置いた過去においてすでに進行していることである。この過去進行形の時間表示は次のようであった。
(7)
(6a)の例で、心の位置(M)に相当するのはwhen節である。(*27) この心の位置(M)において、すでに彼が本を読んでいる最中であったことを表している。
*27 |
when以下は「節」であるが、主節に従う時間を表しているため、心の位置(M)に相当する。主節からみると、言外に含まれる時点となる。
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また、動作動詞でも完結動詞を進行形にした場合は、動作の反復を表すことがある。
(8)
a. Fans were jumping up and down.
(ファンたちが喜びで飛び跳ねていた。)
b. I thought someone was knocking at the door.
(誰かがドアをノックしていたと思いました。)
(8a)ではjump、(8b)ではknockの動作動詞を用いている。これらは完結的な意味を表す動詞なので、進行形にした場合は、反復を表すことになる。時間表示に示した場合は、次のようにすることができる。
(9)
時間枠は、出来事時(E)を中心として設けられていることには変わりがないが、その枠内では丸い点が並んでいる。この丸い点は動作が1回1回完結していることを表す点である。
これに(8a)をあてはめた場合は、この丸い点1つが飛び跳ねた1度の回数を表すことになる。このように進行形とは、点として表される動作についても、その連続性から動作の継続として表すのである。
以上のように進行形とは動作動詞に用いるのが普通であり、状態動詞に用いることはない。したがって、seeやthinkのような状態動詞は進行形にしないのが普通である。
しかし、次のようにするとseeやthinkも進行形として用いることができる。
(10)
a. Mary is seeing someone after she failed in love.
(メアリーは失恋をした後に誰かと会っています。)
b. I'm thinking of dyeing my hair this summer.
(この夏私は髪を染めようと考えています。)
(10a)ではsee、(10b)ではthinkが進行形として用いられているが、それは動作動詞の意味を表しているからである。seeやthinkはそれぞれ状態動詞として用いられるときは「見る」や「思う」という意味だが、上の例のようにseeは「会う」、thinkは「考える」という意味の「動作動詞」として用いる場合は、進行形にすることができる。
しかしながら、用いられ方によっては状態動詞としての意味のままでも進行形にして用いることが可能になる。その場合は、経過的な意味や一時的な意味を表すようになるのだが、このことについては6.2.3.の動作動詞の未完結 及び6.2.4.の動作動詞の一時性 のところで述べていく。
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