7.3. この章のまとめ
この章においては直接話法と間接話法から時制の一致について述べてきた。
時制の一致とは、主節の動詞の時制に応じて従属節の動詞の時制を一段古い形態に変えることである。これは直接話法を話し手の立場から発話することになるために、その「焦点が主節の動詞の時制に置かれて」時制の一致を生じさせるからである。
しかし、このような時制の一致とは日本語話者には理解が難しい。なぜなら、日本語には時制の一致がないからである。たとえば次の例を比較してみることにする。
(18)
a. She said, “ The road is closed.”
b. She said that the road was closed.
(18a)は直接話法であり(18b)はその直接話法を間接話法にして、さらに時制の一致を生じさせた例である。このように英語においては時制の一致により従属節の動詞の時制が変わるのだが、この例を日本語訳にした場合は次のように比較することができる。
(19)
a. She said, “ The road is closed.”
(彼女は「その道路は通行止めになっている。」と言った。)
b. She said that the road was closed.
(彼女はその道路は通行止めになっていると言った。)
上の日本語訳については「 」が取れただけで双方の日本語訳に変わりはない。このように日本語においては英語のように時制の一致を生じさせることがないのである。
たとえ(19b)の英文のように時制の一致を生じさせたとしても、その日本語訳で「彼女はその道路は通行止めになっていたと言った。」とは普通しない。
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