4. 否定文と疑問文
法助動詞は否定文において、否定の作用域が異なる場合がある。
また、疑問文では用いることができる場合とできない場合がある。否定文と法助動詞については、これまで述べている部分もあるが、ここでまとめて整理していくことにする。
4.1. 否定文
否定を表すnotは法助動詞を否定する場合と、法助動詞に続く本動詞を否定する場合がある。
(1)
a. She may not be at home now.
(彼女は今家にいないかもしれない。)
b. It is possible that she is not at home now.
(2)
a. It can't be true.
(それは本当であるはずがない。)
b. It is not possible that it is true.
上は「可能性」の意味を表している。(1a)のmay notは(1b)に表されているように、後の本動詞を否定している。
(2a)のcan notは(2b)で表されているように、法助動詞を否定している。
このような違いは主観的意味を持つか、客観的意味を持つかで生じてくる。そして、主観的なmayは本動詞否定になり、客観的なcanは法助動詞否定となる。
そこで、どちらも客観的意味合いのある「許可」を表す場合は、いずれも法助動詞否定となる。
(3)
a. You can not go there.
(そこへ行ってはいけません。)
b. You are not permitted to go there.
(4)
a. You may not stay here.
(ここにいてはいけません。)
b. I do not permit you to stay here.
上の(b)に見られるように、いずれも法助動詞を否定する形になる。しかしnotに強勢を置く場合は、本動詞否定として表される場合もある。
(5)
a. You can n'ot go there.
b. You are permitted not to go there.
(そこへ行かなくてもいいです。)
(6)
a. You may n'ot stay here.
b. I permit you not to stay here.
(ここにいなくてもいいです。)
客観的意味合いでは法助動詞否定と本動詞否定の双方が現れることになるが、本動詞否定の場合はnotに強勢を置くのが普通である。
ところが、must、shouldの「義務」の意味では、本動詞否定となる。それは義務も何らかの行為を前提とするためで、法助動詞そのものを否定することがないからである。(*26)
*26 |
will、shallの「意志」の意味及びshouldについては、本動詞否定となるが助動詞否定の場合もある。
mustについては、客観的意味をおびながらも、本文の理由から本動詞否定が普通となる。
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(7)
a. You must not smoke in this room.
(この部屋でタバコを吸ってはいけません。)
b. I oblige you not to smoke in this room.
上は、「タバコを吸わないことが義務である」というような解釈になる。
法助動詞を否定し「タバコを吸う義務(必要)がない」という意味では、needn't を用いることになる。
(8)
a. You must not go.
(行ってはいけない。【行かないことが義務である。】)
b. You needn't go.
(行かなくてもよい。【行く必要がない。】)
このことに関しては、shouldも類似している。
(9)
a. You should not smoke in this room.
(この部屋でタバコを吸ってはいけません。)
b. I oblige you not to smoke in this room.
(9a)はmustと同様に、(9b)のように書き換えることができる。notは本動詞を否定することになるが、法助動詞を否定する意味ではneedを用いることになる。
(10)
a. We should not go.
(行ってはいけません。)
b. We needn't go.
(行かなくてもいいです。)
同じ「義務」の意味でも、外的要因から生じることを表すhave toについては、より客観的な意味を持つために、否定文で法助動詞が否定される。
(11)
He doesn't have to work hard.
(彼は一生懸命働く必要がない。)
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