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英語の時間的感覚2
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0.2. 時と時制及び相との関係
 時については前節で述べた通りである。過去、現在、未来という3つの区別があった。そして話し手が発話する場合は、この3つの時を考えながら発話することになるのだが、時制(tense)と相(aspect)を使い分けながら発話をすることになる。

 英語の時制とは形態が変化する動詞のことをいう。時制には、現在時制と過去時制の2つの時制がある。現在時制とは現在のことを表す動詞の形態をいい、過去時制とは過去のことを表す動詞の形態をいう。たとえばwalkは、「歩く」という意味の現在時制である。walkedのように語尾にedのついた動詞は、「歩いた」という意味の過去時制である。(*1)
 このように時制とは時と密接に関係している。時制は「時点」を示し、いわば、「点」的時間関係を表す。

*1 現在時制と過去時制は、簡単にいうと現在形と過去形のことである。しかし、時制とは特に動詞が表す時間的位置に着目する。

 ところで、未来のことを表す未来時制について述べられていないと思われるかもしれないが、英語においては現在時制と過去時制の2つの時制しかない。未来時制という動詞の形態はないのである。英語で未来を表すにはwillやshallを用いる形式があり、確かにこれらを用いて未来時制とする考えもあるのだが一般的とまではいうことができない。なぜならwillやshallに含まれるのは未来を示す意味だけではないからである。これらには法助動詞としての他の意味も含まれている。またwillやshallを用いても、文法的にそれ自体は現在時制なのである。 (*2)

 さらに、英語で未来を表す形式はwillやshallだけではない。他の形式の1つとしてはbe going toの形式がある。これらのことから未来を表す形式については、今後「未来時制」を用いずに「未来表現」を用いていく。また、未来表現については第4章において述べていく。

*2 willやshallは現在では助動詞として主に未来を表すために用いられているが、これらは最初から助動詞として用いられていたわけではない。OE(Old English)といわれている古英語の時代にはwillには意志、shallには義務などの意味がある動詞として用いられていた。聖書の中ではshallがその意味から多く用いられている。これらは現在までの間に双方とも未来を表す助動詞として発展したのである。しかし、現在でもwillには意志、shallには義務の意味が残っている。




 さて、相についてだが、これは動作や状態の様相を表すことをいう。動詞の形態ではなく、文法形式で表される。そして、相としては一般的に完了相と進行相の2つがある。完了相とは、いわば完了形のことである。現在完了や過去完了などがこれに相当する。また進行相とは、進行形のことをいう。

 そして相とは、時との関係においては時制と同様に密接に関係しているが、文法形式をわざわざ用いることから、時制では表すことができない時間関係に重点がおかれる。たとえば完了相の意味としては出来事の完了があり、進行相には進行中の出来事の意味がある。

 相とは時制が表す「点」とは異なり、「線」的時間関係を持っている。この完了相については第3章 で、また進行相については第6章で述べる。


 しかし、英語においての相とは、「時制」と「相」の両要素を含む。特に現在完了相は、そのために時制と相の区別について長く議論されてきた。両要素を含むことから、ここではあまり聞き慣れない「相」を用いずに、完了相と進行相についてはそれぞれ完了形、進行形というようにしていく。 (*3)

*3 現在完了形は「時制」と「相」の性質を持つが、現在時制の一種である。

 ところで、過去の出来事を表す場合には、たとえば過去時制と現在完了形の2つの形式が英語には存在している。これらには特徴となる意味がそれぞれに含まれている。そこで、話し手が過去の出来事を発話する際には、時間的または心境的観点に、明らかな2つの区分がされていることになる。(*4)
 この過去においての2つの形式については第2章第3章 で述べていくが、未来においても英語では話し手の時間的または心境的観点に、実は2つの区分がされている。このことについては第4章 で述べていく。

*4 英語では他のヨーロッパ諸言語よりも過去時制と現在完了形が厳格に使い分けられている。たとえばyesterdayなどの過去を特定する副詞は、英語において現在完了形との共起が許されないが、いくつかのヨーロッパ諸言語では特に話し言葉で、現在完了形との共起が自由に生じている。

  Ich habe ihn gestern gesehen.(ドイツ語)
 *I have seen him yesterday.




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