6.3.完了進行形
完了進行形とは、完了形に進行形を用いた文法形式である。完了形と進行形はどちらも文法形式なので、それが重なる形になる。進行形は過去、現在、未来において用いることができるので、そこから過去完了進行形、現在完了進行形、未来完了進行形の3つの形式が完了進行形にはあることになる。
6.3.1.現在完了進行形
現在完了形はhave+過去分詞の文法形式で表すが、現在完了進行形はhave been+現在分詞の文法形式である。
現在完了形については先にも述べた通りだが、その用法は完了・結果、継続、経験の3つであった。しかし、現在完了進行形が表すのはそのうちの継続だけである。
現在完了形の継続とは、ある過去の時点から現在まで何らかの出来事が継続していることを表す用法であったが、特に動作動詞については進行形を用いることになる。なぜなら、状態動詞はその意味上継続を表すのに進行形が不要だからであるが、動作動詞にはそのような継続の意味が含まれていないからである。
現在完了形において進行形にしない動作動詞を用いた場合は、完了・結果の用法として捉えられることにもなる。
(26)
a. I have read these reports.
(これらの報告書を読みました。)
b. I have been reading these reports.
(これらの報告書を読んでいます。)
上の2例について、(26a)は現在完了形、(26b)は現在完了進行形の例である。(26b)はある過去から現在まで報告書を読んでいるという継続の用法を表しているが、進行形を用いていない(26a)は完了・結果の用法として捉えられることになる。これは、動詞に動作動詞を用いているためであり、進行形にしないそのような動詞は、過去においての動作の完結を意味することになる。
(27)
a. I have written the letter.
(手紙を書いた。)
b. I have been writing the letter.
(手紙を書いています。)
上も同様である。進行形を用いた(27b)ではある過去から手紙を書いているという継続を表すが、(27a)では進行形を用いないために完了・結果の用法となり、意味は手紙を書き終えたことを表すことになる。
したがって、継続の意味を表すためには、進行形を用いて時間的幅を持たせる必要があることになる。このような現在完了進行形を時間表示に示すと、次のようになる。
(28)
発話時(S)、心の位置(M)、出来事時(E)の3点については、現在完了形の時間表示と同じである。
しかし、過去時を始点として、矢印が現在時まで伸びている。これは出来事の継続を、新たな時間軸として示している。(これまで述べてきた進行形の時間表示とは異なり時間的枠は設けられないが、このことについては次節で述べていく。)
ところで、動作動詞は継続を表すために、このように進行形にする必要があるのだが、全ての動作動詞についてそうしなければならないということではない。それは動詞によってはfor句やsinceなどの期間を表す副詞と共起させることで、継続の意味を表すことが可能になるからである。
(29)
a. We have waited here for an hour.
(私たちはここで1時間待っています。)
b. I have read a novel for two days.
(私は2日前から小説を読んでいます。)
(29a)で用いられているwaitは動作動詞であるが、for句と共起させることで継続の意味が生じている。
また、(29b)もreadを用いているが、for句と共起させることで継続の意味を持つようになる。
しかしながら、このような動作動詞でも、特に口語においては進行形を用いることが多い。上の例で用いられているのはwaitやreadだが、特にwait、その他にはsitやsleepなどのあまり動作性を感じさせない動詞は、進行形を用いて表される傾向にある。(*31)
状態動詞については継続の意味を持っているために、進行形とは関係なく継続用法を表すことができる。
もしも、この状態動詞の継続用法に進行形を用いた場合は6.2.5.の状態動詞の一時性のところで述べたことと同様に、一時的な意味が含まれる。
(30)
a. We have been living here since last month.
(私たちは先月からここに住んでいます。)
b. I've been working ten hours a day recently.
(最近私は日に10時間働いています。)
(30a)では先月から現在まで住んでいるという意味である。
(30b)も、現在までの数日間にわたって10時間働いているということである。
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