8.1.3. 仮定法過去完了
前節で述べた仮定法過去は、現在の事実とは反することを表す用法であるが、仮定法過去完了とは過去の事実とは反することを表す用法である。したがって、仮定法過去をそのまま過去のこととして表している用法と考えることができるのだが、その出来事が過去に明白に生じなかったことについて表すことになる。
また、仮定法過去完了は仮定法過去と同様に、if節を伴うことが多い。
(8)
a. If I had known you were in hospital, I would have visited you.
(あなたが入院しているのを知っていたら、お見舞いに行っただろうに。)
b. The soccer game might have been played if the hurricane had not been approaching us.
(ハリケーンが接近していなかったのなら、サッカーの試合は行われたかもしれないのだが。)
c. If I had arrived 10 minutes earlier, I would have been able to see her before leaving.
(私が10分早く到着していたら、出発前に彼女に会うことができたのに。)
d. If I had known you were so busy, I would not have called on you.
(あなたがそんなに忙しいと知っていたのなら、私はあなたを訪ねなかっただろうに。)
上の例はある過去においての事実とは、反することを表している。
(8a)では過去において入院していることを知らずに見舞いに行かなかったことを表していることになり、また(8b)ではハリケーンが接近していたのでサッカーの試合は結局行われなかったことを表している。他の2例も同様であるが、(8c)では話し手が過去において結局彼女に会えなかったことを表し、(8d)では忙しかった相手のところを訪ねてしまったことを表している。
これらの仮定法過去完了について時間表示に示すと次のようになる。
(9)
a.
b.
仮定法過去完了も時間表示としては仮定法過去と同様に例外的となる。
その形式だけから時間表示を考えた場合は、(9a)のようになる。
しかし、実際は心の位置(M)と出来事時(E)の2点は、発話時(S)から1つだけ離れた過去時に重なることになる。さらに以前の時点を示す過去時に、仮の出来事時を表す(E)を置くことになる。こうして考えられる時間表示が(9b)である。
以上だが、形式的な性格を持った表現である。ゆえにこの形式は用いられることが少ない。
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